日本語教師養成科
Japanese Teacher
明生コラム
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コースの特長
就職状況
〒130-0021 東京都墨田区緑1-2-10
ドリアンという果物を知っていますか?
大きさはときにおとなの頭くらいあり、重さは大きいもので5キロくらい。
突起がいくつもある茶色い殻に、形は恐竜の卵のよう。中には、カブトムシの幼虫のような形をした実が4つ入っている。
一つの房の長さは20センチほど。
世の中にこれほど臭く、これほどうまい果物はない。
ドリアンは本当に臭い。
耐え難いほど臭い。
私はある日、シンガポールの高島屋の地下の食品売り場を歩いていた。
すると、ガスの臭いがした。
こんなところでガス爆発に巻き込まれてはまずいと思い、私は歩を速めた。
ところが、臭いがどんどん強くなってくる。
やばいなあ、と思っていたら、
ドリアンが売られていた。
何だ、これかと苦笑した。
ホテルや地下鉄などへのドリアンの持込は禁止されており、買っても持て余すことになりかねなかったが、食いたいという気持ちに我を忘れ、ただちに2房切り出したものを買い求めてしまった。
買ったはいいが、ホテルには持ち帰れない。食べる場所がない。選択の余地はなく、オーチャード通り(銀座みたいなところ)のベンチに座って、道を歩く人々の好奇の目を無視して、大きなドリアンの房にかぶりついた。
ドリアンの味をどう説明すればいいのか?
熱帯には、バナナとかアボカドとか水気のない柔らかいイモのような果物がある。
あれの系統。
手に持つとネチャーとして手にくっつく。
味は、栗を柔らかくしてクリームチーズを加えたような…ただうまいというのではない。
惹きつけられる…夢中になる…人を魅了してやまない…夢に出てくる…喩えようがない。
2つの房をあっという間に食べ終わり、最後は指についたのを舐める。満ち足りた気分でホテルに帰った。
ブルネイでは建坪100坪の巨大な家だった。
夜中のどが渇いて台所まで飲み物を取りに行くと、遠すぎて途中で渇きのあまり行き倒れになりそうだった。
それで、2階に飲み物を入れておくための小さな冷蔵庫を買った。そんな大きな家だったが、ドリアンを買って冷蔵庫に入れておくと、その臭いが2階の私の寝室にまで漂ってきた。
たまらないのは、ドリアンを食べた後でげっぷをしたとき。
ひどい臭いで卒倒しそうになる。
これらすべてに関わらず、私はドリアンを深く愛する。
ドリアンを食べ、その味を知ることによってこの世に生まれた幸せが何パーセントか増すのだ。